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目をうっすら開ける。
視界は歪み、まだ真っ赤な火が揺れていた。更に火の威力は激しくなり、だけど倒壊はされていない。
城は丈夫に作られていた…
「…魔法」
痛くないし熱くない。
私の周りに覆うのは結界。
いつの間にか魔法がかけられていた。
一体誰が?
いえ自分が無意識にしたのだ。
自分の身に危険が生じる時に自動的無意識に発動する魔法。
例え意識が失っててもそれは発動する。
「…もしそれがなく、魔力も人並みになく、…魔法が使えない人間だったら…」
きっと死んでいた…
「……お母様…お父様…」
視界がぐにゃりとして道がわからないが、なんとなくあと少しで両親の寝室につくだろうとわかっていた。
躯を起こし、立ち上がる。結界はいずれ消える。魔力は体力を消費する。
だから急がなければ…
私は寝室部屋へと向かったのだった…
そしてそれはすぐに見つかる。
ドアノブに触れる。普通の人間なら火傷を負うだろう。しかし今私の躯の周りには防御結界がはられている。多少の痛みはあれどノブに触れられた。
「……」
ゆっくり躊躇いなくノブを回した…
「え…」
そして私は息を呑む。
「っ…お父様…お母様……」
倒れている父と母。その二人は遠くから見てもわかる。火の赤が邪魔してもわかる。
「し…で…る?」
血を流し、息絶えた二人。
母親だけ何故か惨い死だった。
あの日記を思い出す。
兄が生まれた時、母親の腹を食い破った……と。
それをまるで再現するかのように兄とは関係ない母、私にとっては大事な母が腹を裂かれ、臓器が晒されていた…
「う…ぷ…」
気持ち悪い。
一体誰が?
何故お母様だけ?
お母様だけ恨みがあったと?
なら横にいる父は巻き添え?
「う……」
ハンカチを取り出し口元を押さえる。
「は…っ、んく…お兄様…お兄様…」
もう私の頼りは兄しかいない。兄しか家族がいない。無償に兄の顔を見たくなった。周りがどう思おうと、確かに怖いけど…でも私には兄が必要なの。
お兄様はどうかご無事であって欲しい…
私は2つの亡骸に顔を背け、元きた方へ戻った。
が、まだ悲劇があった…
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