prolog

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それは魔王が密に愛していた女性だから。 愛していた女性なだけに未練が残りました。 愛していた女性なだけに憎しみがこみ上げました。 魔王は最後に女の腹に宿る命に自分の魂を移しかえ、命を絶ちます。 そして彼女にこの世界の権力を握る地位を与えたのです。腹の中のものは王子。その女の夫は王。 密かな初恋。 初恋は実らないもの。 二人の愛を祝福などしない。腹の子供。わずかに我の魂の意識が宿るその子供がいずれこの世界を滅ぼすだろう… ナキラよ… やがてお前の国をも浸食する日はくるだろうか。 一つだった国がやがて枝分かれし、嫌でも戦争に巻き込まれる日がくるであろう。 だがきっとお前の事。中立なんていう生易しい国をつくる事だ。しかし一つの国には城があり、権力を持つものと持たないものもいる。 いくら中立国を作っても貧富の差は生まれるのだ。 貧富の差がない楽園都市なんて最初だけ。人間は汚い。いずれ神の意志に反する行動をするだろう。 我の願いはもはや一つしかない。自分が作った国が破滅へと導く事を…我が愛した女の次なる生まれ変わりにも不幸が訪れる事を… 我の心は何百、何億も黒く闇のまま… 愛してると囁きながら他の男に移っていった女。 汚く醜い。 だけど愛しく憎い。 なんともいえない憎悪と愛情。 この衝動がいつまで続くのか… ナキラ… 出来れば殺されるなら愛する女じゃなくお前に殺されたかった。 お前は無二の親友。心の支え。 喧嘩したまま別れてしまったが、謝りはしない。 お前の手で死ぬなら死にたかった。 だってそうすればお前も我と同じ所へ堕ちるのだから―――……
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