憎しみの矛先

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小さい頃から私は城の中を冒険するのが大好きだった。 母様にダメだと、父様にダメだといわれても、私は城の中を探険した。 「?」 ふと足を止める。 地下に足を踏み入れた時だ。 自分の家の城は綺麗な内装された宝石のような建物だと思っていた。 しかし地下を見た時、それは違ったと確信する。 「なに…これ?」 沢山左右に列になって並ぶ牢屋。拷問道具はない。多分拷問部屋は違う場所にあるのだろう。だって壁の所々に血の跡があったのだから… 「酷いわ…」 歩く。牢屋の中に誰もいない事を願いつつ。 だけど… 「?」 一人…一人だけいたの。 厳重に茨の鎖で繋がれた、魔法結界。我が国アスラティアは魔法国。幼い頃から魔法を習う。 魔法にもタブーなものもあり、してはいけないのもあるの。 私は回復系の防御系魔法。 そしてタブーのは2つある。 一つ死者を生き返らせる事を禁ずる。 一つ囚人を助ける事を禁ずる。 だけど目の前にいるのは… そのタブーを犯したものは罰が与えられる。ばれなければ幸運。ばれたら百億の牢屋を過ごし拷問を受ける。 「っ…」 それでも… 「……」 にっこり笑うその子に私は……私は… パキンッ 鎖に手を伸ばした。 「何をしているカナリア」 「お兄様」 威圧的な視線。私はぼーっと階段の手すりに手を置いて立ち止まっていた。 下りてくるお兄様… 、アスラティアの第一王子で時期王のルヴィシャスは私を見下ろしていた。 兄妹なのにその視線は冷たくて… 「邪魔だ」 「ご…ごめんなさい」 「……」 横を通り過ぎる。 心臓がバクバクしていた。 兄に会う度に緊張が走る。 長いマントが翻し、私の頬を軽く撫でる。 「……」 私はずっと一人っ子だと両親から言われていた。 だけど本当は兄弟がいたのだ。 たった一人の兄。 あの牢屋に繋がれた男の子。 私は手を伸ばした。外側から解けない結界魔法。内側からじゃないと解けない仕組み。しかも親族じゃないと解けないのだ。 私は躊躇いなく鎖に触れた… そして解いた。 解いた後少しだけ私は後悔した。とんでもない事をしてしまったと思ったから……
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