45人が本棚に入れています
本棚に追加
「ん…」
夜、中々寝付けなかった。静寂過ぎるからか。
何か不安と胸騒ぎがして私は瞼を開ける。
「どうしましょう……ん?」
くんっと鼻を鳴らす。
何?何か焦げ臭い。こんな夜に誰か料理して失敗したのかしら。
そんな呑気な事を思った時だった。
「お嬢様!」
突然音をあげて部屋に入ってきたのは私の身の回りのお世話をしてくれるエリーだった。
服が煤(すす)だらけでやはり何か料理に失敗したのかと思ったらどうやら違うようだった。
部屋のドアを閉めていたから外がどうなっていたかわからなかった。
「え…」
夜だというのに明るい。
夜は寒いのにやたら熱気が凄い。
息ができないくらいの沢山の煙…
ドアの外の光景が真っ赤だ。
「火事ですカナリア様!」
「か…じ?」
「今他の使用人達が一斉に水魔法使ってますが、何分意図的に火を放たれたので厄介なのです。まるで水を拒むかのように消えてくれません。火に特殊な何かが宿っているのか…」
「意図的…一体誰が」
「わかりません。ですがきっと政治絡みでしょう。今の国に不満持つ貴族が何人かいるのは確かです。だからそれらの類かと」
「火を放ったのは城内の貴族だと…?」
「憶測ですが…」
という事は計画的犯行?何故…?
煙が部屋の中へ入ってくる。
「急いで下さい。魔法だけであの火はとめられません」
「え…えぇ」
寝間着なままなのも気にしないまま、私達は部屋を出る。火が回っていない所へなんとして逃れるように…
「駄目だ!防御結界11突破されました!」
「防御結界2、こちらもです」
「何なんだこの火は!」
「我々じゃどうする事は出来ない。まだ国王と王妃は!」
「何としてもお二方がくるまでは新しい防御をはろう…」
汗だくになりながら防御結界の魔法をする城の使用人。結界をはった後ろにもう一人の使用人は水魔法で火をとめようとしていた。
しかし火はまるで水を当たれば更に勢いをますかのように激しく燃え上がる。
騎士団員達も中には参戦し、半分は城の中にいる者達を外へ避難させ、もう半分は使用人達と同じく結界をはって水魔法で火を消していた…
「…エリー…」
横を通り過ぎる。
最初のコメントを投稿しよう!