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白衣を着て病院の中を颯爽と歩いている美桜。
彼女は親しい同僚もなく看護師長のうけも悪く、周りから一歩置かれた存在だった。
今日もまた後輩のミスで注意をした美桜が看護師長に呼び出された。
「何故ですか?彼女は指示していた仕事を忘れて大部屋の患者さんと雑談していたんですよ。私は雑談する前にするべき事を済ませてからしなさいと注意しただけです。」
看護師長の前でも美桜は少し苛立ちを表に出しながら反感的に話した。
「何も患者さんの前で言う事ないでしょ。患者さんとのコミュニケーションはとても大事な事じゃない。あなたこそ見習うべき所があるんじゃないの。」
看護師長は美桜の事を普段から良く思っていなかったのか、冷たい口調でミスをした彼女をかばうように美桜を軽く睨みつけて言った。
またいつもの事だ。
何かあるとすぐにその話ではなく何かと性格の事を指摘されてしまう。
「私はホステスではありません。患者に媚びる必要はないと思います。」
美桜は看護師長の攻撃的な口調に負ける事なく冷静に言い返した。
「白戸さん、内線です。」
そこへ院長先生からナースステーションへ内線がかかってきた。
「失礼します。」
美桜は一瞬その内線で救われたと思いつつ看護師長にそう伝え院長室へ向かった。
救われたと思うのは束の間、美桜の心の中は少しずつ不安でいっぱいになった。
院長ともあろう人が美桜に何の用があるというのだろう。全く予想もつかず重い足取りで院長室へ向かった。
院長室の前で立ち止まり、心の準備をするため一、二回深呼吸をした。
コンコン…
扉をノックすれば扉の向こうから「どーぞ」と院長の返事が返ってきた。
「白戸です。失礼します。」
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