19人が本棚に入れています
本棚に追加
「は、晴景!」
「どこをどう通ってきたかは解らんが、自分の足を見てみろ。包帯は泥だらけだわ、擦り傷はあるわ…気付かなかったのか?」
言われて見れば、確かにそうだ。安芸の大名とは思えないほど汚れている。幼い頃以来だ。ここまで汚れたのは。
今はただ、晴景に抱き上げられて、その心地良さに身を任せていたかった。
余程疲れていたのか、晴景に運ばれているうちに眠っていたようだ。起きたのは深夜。酒宴も終わり、皆寝静まっている。部屋を見渡すと、私と元親が案内された部屋とは違うが、見覚えがある。どこだ…
「やっと起きたか」
声をかけられ、やっと判った。ここは晴景の部屋だ。着物も晴景から貰った物ではなく、また、別のもの。足首の包帯も、新しい物に変えてある。擦り傷も手当てがしてある。
「どうしたんだ?驚いた顔をして…」
「う、ううん。なんでもない」
起き上がり、私の事を後ろから抱き締める。
「お前…今にも死にそうだったぞ…」
私の指に、晴景が指を絡めてくる。確かめる様に何度も頭を撫でてくる。
「色も白くて、細くて、軽くて、力が抜けてて…あのまま、抱き上げたまま死んだら、どうしようかと思った…」
「心配、かけたな…」
晴景が、
最初のコメントを投稿しよう!