酒の勢い

13/18
前へ
/83ページ
次へ
「は、晴景!」 「どこをどう通ってきたかは解らんが、自分の足を見てみろ。包帯は泥だらけだわ、擦り傷はあるわ…気付かなかったのか?」 言われて見れば、確かにそうだ。安芸の大名とは思えないほど汚れている。幼い頃以来だ。ここまで汚れたのは。  今はただ、晴景に抱き上げられて、その心地良さに身を任せていたかった。  余程疲れていたのか、晴景に運ばれているうちに眠っていたようだ。起きたのは深夜。酒宴も終わり、皆寝静まっている。部屋を見渡すと、私と元親が案内された部屋とは違うが、見覚えがある。どこだ… 「やっと起きたか」 声をかけられ、やっと判った。ここは晴景の部屋だ。着物も晴景から貰った物ではなく、また、別のもの。足首の包帯も、新しい物に変えてある。擦り傷も手当てがしてある。 「どうしたんだ?驚いた顔をして…」 「う、ううん。なんでもない」 起き上がり、私の事を後ろから抱き締める。 「お前…今にも死にそうだったぞ…」 私の指に、晴景が指を絡めてくる。確かめる様に何度も頭を撫でてくる。 「色も白くて、細くて、軽くて、力が抜けてて…あのまま、抱き上げたまま死んだら、どうしようかと思った…」 「心配、かけたな…」 晴景が、
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加