酒の勢い

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 既に通達済みだったのか、すんなりと私達の事を中に入れてくれた。  春日山。安芸では味わえない涼やかな空気。全く違う木々の香り。鳥のさえずりすら違うものに聞こえてくる。  春日山の空気に酔いしれていると、廊下を歩く音がする。 「元就、来たらしいな」 障子を開け、顔を出したのは晴景。隠居したはずの身の上ながら、しょっちゅう春日山に来ては入り浸りしているらしい。  思わぬ相手の登場に、無意識で目の色が変わったらしい。普段、じっとしている元親が、腰を上げた。 「じゃ、俺は謙信公でも探してみるか」 「お虎に手を出したら、四国潰すからな」 「貴方様の承諾を得るまで、手出しはしませんよ」 それだけ言うと部屋を出ていく元親。後に続こうとしたが、障子を閉められ、晴景と二人きりにさせられてしまう。 「…お、お久しぶりです…」 「そうだな。久しいな」 会話が続かない…何を話せば良いのか解らない。色々考えていると、目の前に晴景が居た。 「お前…そのうざい兜、いい加減取ったらどうだ?」 「え?い、いや、その…」 「取れって」 「いいよ。遠慮する!」 「お前、行儀良くねぇな。人ん家来たら、こんなもの外せ」 晴景が私の兜に手を掛けて、
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