酒の勢い

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晴景の手を借りて立ち上がるが、まだ足元がおぼつかない。足首に力が入らない。 「あっ!」 無理をして、足を前に出そうとしたのがまずかった。足首を変に捻り、派手に転んだ。  音に気付き、晴景が振り返る。手には薄手の羽織。以前春日山に晴景が着ていた物だ。 「大丈夫か?」 「あ、ああ…」 足首に鈍い痛みが走る。軽く捻挫したようだ。 「診せてみろ」 手際良く、私の足首を動かす。右足首を軽く動かすと痛みが走る。 「痛っ…」 「捻ったのか?」 「らしいな…」 「湿布でも貼って、固定しておけば直ぐに良くなるさ。  ちょっと待ってろ。探してくる」 それだけ言うと、私の肩に羽織をかけ、部屋を出ていった。足早に廊下を抜ける音がする。羽織からは晴景が使っている香木の香りがする。爽やかで心地が良い。  普段、気張っている私にとって、何の気兼ねもなく優しくしてくれること。ただ、それだけの事が嬉しかった。 「晴景…」 私の乾いた心の中に染み渡る様に、晴景が私の中に入り込んでくる。以前、春日山に来た時は、こんな感情など無かった。  傍に居てほしい。晴景を感じていたい。認めたくはないが、確かにそう思っている私が居る。部屋に一人きりなのは慣れて
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