19人が本棚に入れています
本棚に追加
いるはず。だが、どこか淋しくて仕方が無い。
自然と膝を抱えてしまう。思わず、涙が溢れそうになる。泣いてたまるか。涙なぞ流してたまるか。
「どうしたんだ?膝なんか抱えて…捻挫だろ?泣くほど痛かったか?」
不意に声をかけられ、呆気にとられた表情で顔を上げる。目の前に晴景が居る。考え事をしていて気が付かなかった。
「痛かったら、ごめんな」
晴景が私の右足を自分の膝の上に置き、手慣れた様子で手当てしていく。
包帯を巻き終えると、晴景が私の顔に手をかけた。
「痛かったか?」
どうやら涙を流していたみたいだ。…泣きたい。声を上げて、抱きついて泣きたい。だが、そんなこと出来ない。ただ、必死に堪えて、いつもの自分を作り上げる。
「いや、大丈夫だ…ありがとう…」
立ち上がると、さっきは気付かなかったが、着ている着物の丈が長い。どうにか引きづらないが、足が隠れてしまう。
「少し長いみたいだな。これでも詰めてみたんだがな」
詰めた?
「これ、晴景の…?」
「二、三年前に着ていた浴衣さ。気に入っていたんだが、裾が傷んでな。直して暫くは着ていたが、俺が着ると、妙に貧乏くさい丈になっちまったから。だからといって、俺より身長低い奴は、
最初のコメントを投稿しよう!