序章

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 春の日差しは、ぽかぽかと温かくて気持ち良かった。  アジア特有のじめじめした気候も、春の間だけは爽やかで、海から吹く風も優しく身体全体を包んでくれた。 「…寝てるの?」  読みかけの小説を顔にかぶせ微動だにしないミサトに、ユイは話し掛けた。  ミサトは小説を顔から持ち上げて、眩しそうに目を細める。 「うん、うとうとしてた」  差し出されたアップルジュースを受け取りながら、ミサトはありがと、と礼を言う。  ユイは苦笑して、ミサトの隣に座った。 「春だものね。眠くなるのも分かるわ」  ここは、ユイのプライベートビーチが一望できるバルコニー。  あまりにもぽかぽか陽気なので、ユイが久しぶりに休みの今日、朝からまったりと寛いでいた。
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