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――食事を終え、二人で食器を片づけ終えて……俺は、口を開いた。
「なぁ、優」
「ん?どしたの?」
無垢に尋ねてくる優に言うべき言葉は決まっていて。伝えたい言葉は、凄く単純で。
「いや……えっとさ」
だけど、いざ口に出そうとすると……その言葉は、『好き』より相当恥ずかしい。
けど俺はどうしても、その想いを伝えたくて。
「俺たち……そろそろ、子供を作っても良いんじゃないか?」
肩に手を回しながら言うと、優は一瞬キョトンとして。
でもすぐに俺の意図に気付いたのか、顔を赤くしてクスクスと笑った。
「えへへ……夜のご奉仕をご所望かな?」
「……ご褒美、くれるんだろ?」
「うんっ、あっちゃんにならどれだけでもっ」
言いながら、じゃれ合いながら、俺たちは寝室に向かう。
――唇を重ねながら、思う。
俺はもう、優の事が好きじゃない。
けど、代わりに抱くこの想いが……行為を通じて、伝われば良いと思う。
そして、あわよくば……ちゃんと口に出して、伝えられれば良いとも思う。
そう、思っていたのだけど……
「えへへっ……愛してるよ、あっちゃんっ!」
俺の伝えたかった言葉は、優に先取りされてしまった。
コイツのこういうところは、本当に卑怯だと苦笑しながら……俺も、言った。
「あぁ……俺も、優を愛してる」
……先取りされてしまったが、まぁ、ちゃんと伝えられたから良いか。
そう、思いながら……俺は、元、恋人であり好きな人改め、現、俺の嫁にして愛する人と……強く強く、唇を重ねた――
~fin~
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