『好き』≠

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* 寝室の隣は、すぐ居間だった。 結婚が決まって、優は家事の為に仕事を辞めた。 ソレは純粋に嬉しかったし、朝起きると、こうやってテーブルの上にご飯が並んでいるというのは相当幸せだと思う。 毎日俺より早くに起きて、家事に勤しむ優は、本当に素敵な奥さんだ。俺は恵まれてる。 「……ね、あっちゃん。お仕事、大変?」 「ん~、どした、急に?」 「あっちゃん、疲れた顔してるよ?大丈夫?」 「あぁ、大丈夫だよ。そんなに、大変ってわけじゃない」 嘘だった。入社から三年になる俺は、まだまだ新人の扱いだ。 だから上司にこき使われるし、しかも入社一年、二年の新人達の面倒も見なくちゃいけない。正直、疲れていた。 でも、それぐらいは誰だって同じだ。いやむしろ、俺は社内での人間関係が悪くない分恵まれている。 「そっか、なら良いけど……あっちゃん、無理しないでね?」 「あぁ、ありがとな。……つか、お前もあんまり無理すんなよ?家事とか、大変だろ?」 「うぅん、あっちゃんの為だと思えばよゆーだよ?」 「……そうか」 コイツのこういうところは、本当に可愛いと思う。けど、相変わらずドキドキはしなかった。 ――朝食を終えて、家を出る。 「んじゃ、行ってくるな。今日は多分、定時に帰れると思うから」 「ん、頑張ってねあっちゃんっ。頑張ったら、ご褒美あげちゃうよ?」 「……ご褒美?」 「――夜の、ご・ほ・う・し?」 「……アホか」 つか、なんで疑問型なんだ。 「あははっ、相変わらずあっちゃんは照れ屋さんだっ。可愛いねっ」 「うっせ、可愛いとか言うんじゃねぇ」 ぶっきらぼうに家を出ようとして……ふと、立ち止まる。 「ん?どしたの、忘れ物――んっ」 不意打ち気味に、キスをしてやった。 「んじゃ、行ってくるわ」 行ってきますのキスってやつだ。別に、せがまれたわけじゃないけど……何となく、そうしてやりたくなった。それだけだ。
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