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「じゃあ、今からお料理あっためるね?えへへ、今日はごちそうだよっ」
「あぁ……ありがとう」
「どういたしましてっ!じゃああっちゃんは、ちょっと座って待っててね?」
「……あ、優」
キッチンに向かう優を、呼び止めて。
「んっ――」
朝同様に、不意打ち気味にキスをした。
改めて、言う。
「ありがと……なんか、すっげー嬉しいわ、本当に」
「え、えへへ……そんな事言われたら、恥ずかしいよぅ」
顔をちょっと赤くする優は、凄く可愛い。
けれどそんな彼女を見ても、もう一度キスをしても……やっぱりドキドキは、しなかった。
キスの時、昔は感じていた胸の高鳴りが――あぁ、俺はコイツが好きなんだって実感させてくれるソレが……今は、無かった。
あるのはただ、唇に残った彼女の温もりだけで。
――俺は、優が好きなのか?
その自問に、今なら答えられる。
答えは、ノーだ。俺はもう、優の事が好きじゃない。だから、ドキドキもしない。
結婚して、いつも近くにいて……近すぎて、『好き』なんて感情は忘れてしまった。
でも、優とキスをすると……胸の奥が、あたたかくなる。
その温もりは、唇に残ったものだと思ったけど……違う。あれは、優に感じる温もりは、いつも俺の胸の奥から沸き上がっていて。
ソレは、その感情は……『好き』、なんて言葉じゃ、言い表せない。
――仕事で疲れていて。
――ろくに、趣味に当てる時間もなくて。
でも、それでも俺が元気でいられるのは……間違いなく、優のおかけだ。
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