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俺の名前は正弦寺創司郎、正弦寺が苗字で創司郎が名前だ。
ちなみに渾名はテイリ、理由は説明しないが察してほしい。
地元の高校に通う16歳。自分で言うのもなんだがかなりの美形だ。腰まで伸ばした黒い髪は風が吹くと煌びやかに舞い、女に見間違えられてナンパされた経験もある。
さて、自己紹介はこれぐらいで良いだろう。なにせ事態は錯綜しているし、いい加減物語を始めないと読むのもつらいしね。
現在時刻は9時10分、場所は高校の保健室である。かすかに二階の教室から授業の声が聞こえてくる。窓の外からは鳥の鳴き声。目の前には背中からナイフを生やした自分の死体が転がっている。
そう、おれ自身の死体が目の前に転がっていた。つまり、今の俺は幽霊なのだ。
念の為に言って置こう、これは冗談ではない。俺の目の前にあるのは確実に俺の死体なのだ。なにせ俺には後ろから刺された記憶がある。
死んだ今となっても刺された時の痛みは忘れようが無い。体の内部に侵入した硬質な感触は、肉を切り裂き、熱く燃えるような痛みを押し付け俺の命を奪い去った。
まあ、それはいい。人間はいつか死ぬのだから、殺されて死ぬのも自然死と大差ない。
ただ一つだけ納得いかない、どうしても分からない事がある。それは……。
「ええと、正弦寺創司朗さんですか?」
妙にというか、やたらと間延びした声が俺の思索をぶち壊した。ちっと舌打ちして声の発生源を睨みつける。
するとそこには黒いワンピースを着た少女がいた。
「あっあっあのそのえっえっえと、正弦寺創四朗さんですよね」
俺の眼力に押されたのか少女はオドオドと両手を胸の前に合わせて目をウルウルさせている
「なんのようだ」
俺の声はかなり低い、クラスメイトからはへたな暴力団員よりドスが効いていて怖いとよく言われている。
だからだろう、少女はあから様に怯えた様子であとずさった。
黒いハイヒールを履いているわりには機敏な動きだ。
「ごっごっごめんなさい。あの違いましたか?」
「いや、名前はあっているんだけどね」
物凄いスピードで頭を何度も下げる少女に若干、気後れしながら声をかけた。
少女は目をパチパチさせて俺の目を覗きこんできた。
「そうですよね、間違えちゃったかと思いましたよ。もう、創ちゃんのイヂワル」
誰が創ちゃんだ。まったく何なんだ? この女は。
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