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不法侵入してきた人物は、ずかずか部屋にあがりこみ、まっすぐ自分のもとに歩いてくる。薄暗いから見つからないと思ってたのに、甘かったか。
その人物は、自分と目を合わせるために屈み込み、次の瞬間、自分の頬に鋭い痛みが走った。張り手。
リンク「……!」
*「何してんだ」
リンク「…ダーク?」
不法侵入してきた人物、パジャマ姿のダークは葡萄酒色の瞳をまっすぐ自分に据えていた。威圧的な視線にひくり、と喉が鳴る。
ダーク「リスカなんて…なめた真似しやがって…!」
彼は、カミソリを奪い後ろに投げ捨てた。からん、とむなしい音が静かな部屋に響く。
リンク「なんで…わかったの?」
ダークは、黙って彼の左手首を見せた。自分のよりは浅いが、同じように傷ができていた。自分と同じ、たくさんの傷が。
ダーク「俺はお前の影。光が傷を作れば影の存在もできんだよ。…今まではたいした痛みじゃなかったから見過ごしてたけどよぉ…」
今回のは、まじ痛かった。とダークはため息をついた。彼は随分前から知っていたのに、黙っていてくれたらしい。痛くても、耐えて、辛くても。
そして黙認の限界がきた。
リンク「そう…なんだ、ごめん」
ダーク「あのなぁ…、謝んだったら最初からリスカとかすんなよなぁ!?…たく、心配かけさせやがって」
リンク「…また、繰り返すと思う。これを辞めたら…俺…」
ダーク「人を殺してしまう、だろぉ?そん時は、俺がお前を死ぬ気で止めてやっから」
さすがに、自分の影に嘘などつけるわけがない。影が光に嘘をつくこともできないと同じように。
ダーク「だからよぉ、自分を痛めつけるのは辞めろ。なーんの罪もねぇのに血ぃ流す俺の身にもなってみろってんだ」
自分の前髪をかきあげられて、ばっちり目と鼻の先にある彼との目線がぶつかりあう。彼は笑っていた。
リンク「俺…ダークを殺しちゃうかもしれないのに…?」
もし殺戮衝動が爆発してしまえば、味方だろうが、神だろうが、意識できなくなるだろう。
きっと仲間たちは、自分を止めようと闘ってくれる。そうすれば、自分は彼等を我が剣で傷つけ、殺してしまう。
ダーク「お前に殺されるなら本望」
リンク「…なにいってんの」クスッ
涙を流しながら笑いをこぼす、みっともない自分を、ダークはやさしく包み込んで頭を撫でてくれた。
絨毯は、真っ赤に染められゆく。絶望に染められゆく。
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