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嗚呼 私は "星"を知らない
遠すぎる光は 届かないから
だんだん世界が 消え行くの
今日より 明日。 こわい。
キノジイ「姫様ぁぁあぁぁあぁあ!!お茶など飲んでる場合ではないですぞ!」
ピーチ「あら、今日はオフの日ではなかったかしら?」
キノジイ「いいえいえいえいえいえっ!!大事なお客様がいらっしゃるのですっ!」
ピーチ「(お客様…?)」
城のテラスでお茶会の準備をしていたキノコ王国の姫、ピーチ。部屋からポッポー♪と鳩時計が3時を告げていた。
のどかに降り注ぐ春の光。八分咲きになる桜を見下ろし、まるで桃色に包まれているような、甘い香りが漂う。
キノジイ「朝、姫様にお渡しした"本日の予定"の書類に書いていたはずですっ!お忘れになるわけないでしょう!」
憤慨して顔を真っ赤にしている執事、キノジイは姫を見上げながら声を張り上げる。
それに対して、ピーチ姫は困ったように微笑み調達していたクッキーの袋をあけた。芳ばしい。
ピーチ「…―――――…」
ザァアァァ…‥
風にゆられ、彼女の小さな呟きはかき消される。しかし、すぐ近くにいたキノジイは顔をみるみる蒼白にし、ぺこりと謝った。
キノジイ「‥!おいたわしや姫様。このキノジイ、変われるのならば変わってさしあげるのに‥」
そう言ってから、キノジイは慌てて口を塞いだ。姫は、"他人に変わってもらう"なんて事ができないのは百も承知なのだ。
逆に彼女を追いつめてしまう。
しかし、姫はさらに深い笑みを零して震えるキノジイの頭をそっとなでた。
ピーチ「気持ちはとっっても嬉しいわキノジイ。…貴方が傍にいてくれて本当に助かってる」
キノジイ「…!」
ピーチ「あ、お客様をこちらに案内してもらってもいいかしら?今日はとても穏やかでいい日…」クスッ
瞳に涙を溜めていたキノジイは、ごしごしと目をこすり"了解しました!"とテラスから出て行った。
もう年なはずなのにえらく元気、私なんかよりも自分の体の心配をしないと。
ピーチ姫は、こみあげてくる温かい気持ちに堪えられず、一粒の涙を流した。
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