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真っ青な空にまっしろなポットはよく映えた。隣国の姫から貰った"ハーブティ"なるものをこしながらピーチ姫は椅子に腰を下ろした。
目を閉じると、風の音。土のにおい、草の香り。流れる雲の音、桜の甘い甘い春。
去年とはまた違った春。
五感全てが春に包まれているような、まったくの錯覚でしかないけれど。
ぱたん、と部屋の扉がゆっくり閉まる音がした。
はっ、と目を開けると手に被っていた帽子だろうか、真っ赤な帽子を握りこちらに小さくお辞儀する人が。
*「えっと…初めまして、ピーチ姫。僕は配管工のマリオっていいます。よろしく」ニコッ
初対面なのに緊張しないのは、この人の人柄なのかしら?
ピーチ「初めまして。貴重な午後の時間に呼び出してごめんなさい…」
マリオ「そんなそんな!声をかけていただける事だけで光栄ですよ、僕」
にこにこと笑みを崩さない彼。なんだか不思議だ、こんなに近くにいるのに、とても離れた人と話しているよう。
ピーチ「立ち話もなんです、こちらにどうぞ」ニコッ
マリオ「そうですか?…ではお言葉に甘えて!」
マリオは嬉しそうにピーチと小さな白い机を挟んで向かい合う椅子にこしをおろした。
彼がかぶりなおした"真っ赤な帽子"。真っ青な"空"に、目に痛いほど映えた。
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