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ピーチ「…!…おいしいお茶を注ぐからちょっと待っててね」
ピーチはポットを手に取り、少し椅子から腰を上げてこぽこぽと注いでゆく。
鼻に、ハーブの心地よい香りがくすぶっては春の陽気に消えた。
マリオ「あの…ピーチ姫」
ピーチ「なぁに?」ニコッ
マリオ「ひじょー…に言いにくいんだけど…言ってもいいでしょうか」
ピーチ「?えぇ」
マリオ「それ、砂糖入れのカップですよ。僕のカップはこれです」
ピーチ「!!まぁ、私ったらとんだ勘違いを!ごめんなさい!じゃ、そのカップにそそ…」
がたん! 無理にマリオの方へと腕を伸ばすピーチに堪えられず、机が音を立てて揺れた。
マリオ「危ない姫!」
バランスを崩す机とピーチ。自分のみに何か起こっているのかわからずピーチは呆然と倒れていく。
乾いた音をたてて食器が幾つも割れる。
慌てたマリオがピーチを支えたため彼女は指一本切っただけですんだ。つぅ…とあかい雫。
その真っ赤な"血"は、目の前にある真っ赤な"帽子"によりあまり目立たない。
ピーチ「あ…ありがとうマリオ。おかげで助かりました!」
マリオ「…………」
彼は黙ったまま。逆行で顔がよく見えないが泣きそうな表情をしているのはわかる。
ピーチ「…どうしたの?」
マリオ「"視"えてませんよね、姫。何もかも」
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