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ピーチ「…全く"視"えないわけじゃないわ。貴方の顔がくしゃくしゃで泣きそうなこともわかるし、色の判別もできるもの」ニコッ
マリオに支えてもらいながらも部屋に戻り、ソファに向かい合って座った。
テラスでのお茶会は、始まる前に終わっちゃったから。もうお開き。
マリオ「…辛いでしょう」
ピーチ「そうね…。それなりにだけど」
マリオ「…姫さえよければ、僕はあなたの話し相手になりたい」
急な申し出だったけど、彼なりの優しさなんだろう。目はいたって真剣。
ピーチ「本当に…?それは…嬉しいわ。いつも1人で退屈で…寂しいの」
マリオ「…姫。よければ僕の冒険話など語らせてもらいましょうか」ニコッ
"マリオ"という"配管工"。
彼は、ただの"配管工"ではなく多才な趣味を持つ、いわゆる"天才"だった。
冒険を始め、ゴルフ、テニス、喧嘩、さらには医者の免許を持っているとか。"くっぱ"という亀が大の嫌いだそうだとか。
兄弟の話、他愛ない料理の話、他国との文化の違い、廃墟に現れるお化けの話。
すべて、私が知らない
世界ばかりで。
彼の話に夢中になって聞いていると、気付いたときは空が茜色に染まっていた。
春の夕暮れは、澄んでいて空が笑っているみたいで私は大好き。
マリオ「はっ!自分の話ばかり語るのに夢中になってしまった…!ごめんピーチ姫…」
申し訳なさそうに頭をさげるマリオ。ふるふると頭をふり、ピーチは余ったクッキーを可愛い袋につめてゆく。
彼の弟にあげるための"お土産"。話からいくと、その弟は寂しがり屋で大人しいらしい。
なら、その弟から大事な兄を1日の大半借りてしまったのだ。これぐらいはしないと。
ピーチ「いいえ、私も時間を忘れるくらい楽しかった!…久しぶりよ、こんなに心から笑えたのは」クスッ
マリオ「……ふー。あ、よければ、明日予定とかある?」
もう打ち解けたような彼。別に不快感は全くない。不思議。
昨日の今は、"マリオ"という人間がこの国に住んでいることさえも知らなかったのに。
ピーチ「…?えっと…それは何かのお誘いかしら?」ニコッ
意地悪そうに笑うとマリオは帽子の鍔をすこし下げる。目が泳いでいた。
顔が真っ赤なのは、夕焼けの光のせいではないみたい。
マリオ「よ…よよよ…よければば、明日い…一緒に花見ーななんてどーかな…なーんて」
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