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「貴方は…誰ですか?」
「ん?」
その人は困ったように眉根を寄せて、言った。
「…まさか…お前また…」
「え?」
私が何か“また”と言われるようなことをしたのかと、首をひねっているとその人はもう一度最初から、説明してくれた。
「どうやら…お前はまた…記憶を失ったんだろう。また最初からやり直し…のようだな。」
やれやれと言うように、首をふったその人はもう一度…と前置きして言った。
「自己紹介からだな、…俺の名は秀。鷺沼 秀 ―さぎぬま しゅう―。今は、お前と暮らしている。そして、お前は洞仙 由 ―とうせん ゆい―。今また記憶喪失になったようだが、お前はもともと過去の記憶を失っていたから、別に問題はない…が…。」
と、呟くとため息をついた。
(もとから“記憶を失っていた”?)
私が…記憶喪失?まさか。
(あり得ない…だって、私は…今まで…?。)
あれ?どうしていたんだっけ。
(あぁーもう!!なんなのよ~この曖昧なはっきりしない感じは!!)
仕方ない…この人に聞かせてもらわなきゃ。
「鷺沼さんは…私の過去を知ってるのですか?」
私は、鷺沼さんが私にとってどんな存在なのか…。絶対的に信頼できる人なのか不安を感じて、少しの間ちょっとだけ距離をとった。
(そういう人に聞くのもちょっとあれだけど。)
そんな私に、鷺沼さんは少しだけにっこりして言った。
「その反応をみて、安心した。記憶喪失でお前がおかしくなったかと一瞬心配してたんだが…由は由なんだな。」
心底心配していたような鷺沼さんの言葉に、ドキッとした…。
(べっ別に、鷺沼さんがめちゃくちゃ色っぽい笑い方したから…とかじゃないんだから!!)
心のなかで、言い訳染みたことを言ってみる。
「どうした…由?」
「はっはい!?」
ぼんやりしていた私は、鷺沼さんの声に飛び上がってしまった。
「顔が赤い…熱でもあるのか?」
「いっいいえ!!違いますから!!」
あわわわわっはっ話を変えなきゃ。
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