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会場はさほど離れていないが、車で移動するのが筋だろう。
車の中で、純が美奈斗にあるものを渡す。
「陛下、これを」
「陛下と呼ばれると違和感があるな。せめて伯爵とかにしたらどうだ?」
美奈斗は渡された『仮面』を付けながら言った。
「いいえ。『美奈斗様』が『王妃』なら『水都(ミナト)様』は『陛下』でしょう」
確かに道理だが。
ややこしいな、とため息をつく。
車が止まると、先に純と亮が出た。
その瞬間、多分外の女達はうっとりと見ているか、黄色い声を上げているのだろう。
「陛下、足元にお気をつけください」
亮が誘導し、純が手続きをこなす。
何とも素晴らしいコンビネーションだ。
「亮、例の女は居るか?」
「まだ見かけておりません。それよりも、あちらの方々が騒がしいのですが」
亮はちらりと後ろを見た。
そこには、純や亮と一言声を交わそうとしている女性陣があった。
「相手をしてきたらどうだ?私は一向に構わないが」
美奈斗はつまらなさそうに言った。
が。
純はさらに美奈斗に耳打ちしてきた。
「女性方の狙いは陛下、あなたのようです」
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