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開かれた沙耶の右手の平から光がほとばしる。
「な…ッ……!!」
落ちていた数十粒の真珠は、全て白い鳥に変わった。
鳥は羽を落しながらも、夜空へと羽ばたいて行く。
そして立ち上がり姿勢を正した純が見たもの。
白い大きな鷹が沙耶の肩に止まっていた。
「冗談だろ…」
「本当よ」
沙耶は穏やかな笑みを崩さずに答えた。
だが、まだ純は信じようとしない。
「手品か何かだろ?王妃に近づきたいがための」
するとさすがの沙耶も腹が立ったようだ。
すっと瞳を細める。
その仕種は美奈斗と似ていた。
「まだ…信じないのね」
沙耶は自分の髪の毛を抜くと両手で握った。
そして、手を左右に伸ばす。
光を帯びたそれは鎗(やり)へと形を変えた。
「……ッ!?」
一瞬の間合いだった。
沙耶の攻撃は純の喉元を確実に捕らえている。
純には後ろに引く間もなかった。
「信じてくれた?」
ゆっくりと沙耶の口元が緩む。
「お前は何を望む…?」
「私?」
沙耶が答えようとした時だった。
バルコニーの扉が勢いよく開く。
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