第一話:始まり

3/5
前へ
/58ページ
次へ
「美奈斗(ミナト)様、どう致しますか?」 純は『クイーン』こと、『美奈斗』に意味深に問いかけた。 「川瀬 亮(リョウ)、今晩の予定は?」 「夜会があります」 川瀬―――亮は手帳をぱらりとめくり、答える。 そして一礼をし、別室へと下がった。 「純。お前、今晩の予定は開けておきなさい」 「かしこまりました」 純の応答に満足した美奈斗は、一人掛けソファーに座った。 「亜耶(アヤ)を呼んでおきなさい。それと、新しいスーツを一着」 「スーツ、ですか」 「そう」 美奈斗はテーブルの上の雑誌を取ると、純に手渡した。 「今晩は『陛下』よ。私が行ったらつまらないもの」 ゆっくりと笑んだ少女は、艶美(エンビ)である。 二つの双眸は、静かに閉じられた。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加