サクラの樹の下の蒼い芽

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或る朝、中央公園に出掛けた。早春の候とあるからか少々肌寒い。その日は何故か外出したくなり上着を羽織って景気好く家を出た。画にでも描いたような中央公園にはもう既に桜が寒き僕の世界を観護りながらさり気なく咲いていた。更に間近で観たくなったので、歩み寄った。するとそこに青々とした、小さな芽が一本生えていた。覚えずそっちに気が向いてしまった。僕はそのまま飯の事も忘れてひたすら見入った。横になったりうつ伏せにになったり、仰向けになったりして、時にはケータイをイジリながらながら、悠々と緩慢な時間を過ごした。 急激に寒気がして飛び起きた。別段何かホラー的な展開を有する訳ではない。あの小さな芽が気になって辺りを探した。それが直ぐに見つかって安堵の息をつくような心持ちがした。いい加減日も死角に隠れ、別エリアのチェックに取り掛かろうとしていた。この日はもう帰ろうと雑草とおぼしき蒼芽に別れを告げて立ち去った。
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