第二章

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「この私を呼び捨てるようなガキは国中探してもお前くらいだろうな」 皮肉めいた微笑は、みとれてしまうほど美しい。(好みじゃないけどね) そして、多分一生忘れることのない顔。 「……国王陛下がこんなところになんの御用で?真昼間から城下をフラフラするなんて、よっぽどこの国は平和らしいね」 「相変わらず口だけは達者だな、縹家の娘。……いや一一」 一瞬、風が吹いた。 戰華の髪が数本はらりと切り落とされ、頬にはぱっくりと赤い筋が入る。 しゃらん、と音をたてて、簪が床に落ちた。 今さっきまで由佑が手にしていた簪が、戰華の後ろの壁に当たって落ちたのだ。 「一一それ以上言ったら、容赦しないよ」 暗殺は縹家の十八番。 幼い頃から《縹家のために》瑠花に育てられてきた彼女にとっては、脆く細い簪ですら、立派な凶器となる。
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