第一章

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「ここまで……か」 何となく、気を失う寸前に『誰か』に抱きとめられたきがした。 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 「鳳珠さまー」 蘭は超絶けだるそうに、主の名を読んだ。 すぐに主一一黄鳳珠はその場にやってきた。 「なんだ、由佑」 由佑一一鳳珠に名を聞かれた時、蘭はそう名乗った。 本名を言えば、自分が縹家の人間であると解ってしまうから。 だから、あえて蘭は偽名を使うことにしたのだ。 (それに、今の私に縹の名を持つ資格は、ない……) 蘭一一由佑が鳳珠に拾われてから、既に半年が経過していた。 由佑は黄家に居候させてもらうかわりに、家事等の手伝いをしていた。 「鳳珠様にお客さんですよー。いつもの」 瞬間的に鳳珠の麗しい美顔の眉間にシワがよった。 「叩き返せ」 絶対零度の威圧を、由佑はやすやすと受け流した。 「むーりでーす。今回は悠舜も一緒みたいだから」 「なんだ、珍しいな……それなら仕方ない、通せ」 一礼して、由佑は客人のもとへ向かった。
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