151人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここまで……か」
何となく、気を失う寸前に『誰か』に抱きとめられたきがした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「鳳珠さまー」
蘭は超絶けだるそうに、主の名を読んだ。
すぐに主一一黄鳳珠はその場にやってきた。
「なんだ、由佑」
由佑一一鳳珠に名を聞かれた時、蘭はそう名乗った。
本名を言えば、自分が縹家の人間であると解ってしまうから。
だから、あえて蘭は偽名を使うことにしたのだ。
(それに、今の私に縹の名を持つ資格は、ない……)
蘭一一由佑が鳳珠に拾われてから、既に半年が経過していた。
由佑は黄家に居候させてもらうかわりに、家事等の手伝いをしていた。
「鳳珠様にお客さんですよー。いつもの」
瞬間的に鳳珠の麗しい美顔の眉間にシワがよった。
「叩き返せ」
絶対零度の威圧を、由佑はやすやすと受け流した。
「むーりでーす。今回は悠舜も一緒みたいだから」
「なんだ、珍しいな……それなら仕方ない、通せ」
一礼して、由佑は客人のもとへ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!