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「あれは……?」
「昨日、渡したいと言っていた物だ。あれで、どうか魔……」
「っ!」
両親が消されたときとは違う、しかしやはりオノマトペで形容できない耳を劈く様な奇怪な音が走り、慌てて耳を押さえる。その音はもちろん御岳さんの台詞を遮った。音は直ぐに止んだが、御岳さんの話が続く……筈がない。――だって、その音が御岳さんの台詞を遮ったんじゃなくて、御岳さんが言葉を話せる状態ではなくなったことを示すのが今の音じゃないか! その証拠に、まるで眠っている様に倒れたまま喋らなくなった御岳さんの向こう側には……
「よう、二代目勇者」
ああだから言わんこっちゃない! 自分でいるって言ってたくせに……!
「お前が血を見て狂ってたから、今回は血を出さずにやってやったぜ? 随分派手な音出したけどな」
「非道! 鬼畜! 人でなし!」
俺が何と罵ろうと「勝手に言ってろよ」と余裕の笑顔を見せ付ける。その悪魔じみた笑顔が許せなくて、手近な凶器……さっきの大剣を持ち、それを魔王に向けて振り下ろした。魔王は一旦後ろに下がり、一瞬だがその表情を歪める。その後直ぐに気味の悪い笑みに戻り、割れた大きなガラス窓から、飛び降りた。窓辺までよって様子を伺うが、既に魔王の姿はなく、俺は一〇〇メートルはあろうかという高さにただ腰を抜かすことしかできなかった。
「そうそう、お前が犯人扱いされないように後始末はしておくから安心しな。それと、その剣は持ってけよ。まあ、敵に塩を送るってやつだ。アハハハハヒャヒャヒャ!」
姿は見えないのに、声がきちんと耳から聞こえてくる。それも止み、完全に魔王の気配が消えた。
「何なんだよ……! うおおおおおお!」
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