ep:1

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 そこから先のことはまるっきり覚えていない。魔王の言った“後始末”のおかげなのか、家は何事も無かったかの様に元の姿を取り戻している。ただ、両親たちの姿は無かった。そして御岳さんについても、ただの失踪。大きな報道もされることは無かった。そして手元に残ったのは、帰り際に持っていたのかさえ覚えていないあの大剣。気づいたときにはずっとこれを持ちながら、二階にある自分の部屋のベッドに座っていた。――正直、これさえなければ昨日からの一連の出来事を、せめて頭の中でだけでも無かったことにできるのに。  しかし、現にこの剣があり、それがあの時御岳さんが渡そうとしていたものである以上、俺は認めたくないながらも、このありえない現実から目を背けてはいけなくなった。……さて、これからどうしようか。剣は大きさの割に、扱えないほど重いという訳ではないことは、魔王に向けて振った時に分かった。しかし、あれだけの芸当を見せられて、こっちは魔法の一つもない状態で戦うなんて自殺行為も甚だしい。――魔法か。そんなもの、何時から信じなくなっただろう。
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