ep:1

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 ここでそろそろ、俺の言う“魔王”というものがどういった存在なのか説明しよう。舞台は今から二十数年程遡り、前の元号の末期になる。勿論、今高校生をやってる俺が生まれる前の話だ。  “魔王”と呼ばれるその化け物は、ある日突然現れ列島を破滅に導いたという何とも荒唐無稽且つ些か信じがたい内容であり、その化け物の姿すら、俺らゆとり世代は知らないものである。いや寧ろその存在の認識の違いが世代を分けるとさえ言われている。確か時空を歪めるとか光線や火を吐き出すとかその腕力であらゆるものを破壊し尽くしていったとか本気を出せば核ミサイル並みの技を出せるとか。そして、そこで立ち上がった勇者達がその化け物を倒し、列島は再び平和を取り戻したという……あー駄目だ駄目だ。自分で説明しておいてなんだが全く以て信用できねぇ。 「何だよ、それ」  魔王を倒した勇者について雄弁を振るうと二度目の「何だよ、それ」を言われる。 「え、だって、勇者って……」 「お前、子供の頃親に変なこと吹き込まれたんじゃね?」  図星をつかれ大恥をかく。幼い頃に言い聞かされた一つの御伽噺。だから、俺の中ではあんなにも信じられない内容になっていたのか。
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