ep:1

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 魔王がどうのこうのと言ったニュースがあった数日後、俺はいつもの様に自宅へと足を運んでいた。自宅まで着きドアを開け、ただいまと声をかける瞬間に、その異変に気づいた。返事が無いから出掛けているのかと思う間も無く。 原形もとどめぬほど壊れ荒らされ散らかされた物、物、物。 おびただしい量でそれらを汚している赤、赤、赤。 ああこの赤はきっと血なんだろうなと気が動転してそんなことを思うが、それが間違っていないことをその後すぐに知ることとなる。 ――だってそうじゃないか! 目の前に広がる無残な光景のその奥で、両親が倒れてて、そこからその赤が広がってるんだぜ? 「うああああああ!」 なりふりかまわず両親の元へ駆け出す。二人ともまだ意識はあるようで、俺が話しかけると返事をした。 「今救急車呼……」 「いいから早く逃げろ!」 救急車を呼ぼうとするも父にそれを妨げられる。別に犯人が潜んでいる気配も無ければ、爆弾が仕掛けられているような機械音もしない。やはり大怪我を負って動転しているのだろうと思い、俺は電話を掛けようとした。一一九番に発信をしようとした時に、オノマトペで形容できないような音とともに両親の姿が消えた。後に残るのは、大量の赤い水溜りだけ。確か、人の血液の量は五リットルあるそうだが、多分ここにあるのはその倍くらい……。
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