ep:1

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その後は、一一〇番に連絡し、警察による取調べが行われた。一応捜索願も出しておいたが、あの様子では望みは薄いと思われる。警官に慰めてもらったが、俺は気力を失って、ただただ長椅子に座っていた。当たり前だ、俺だって色々と取調べを受けたのだから。そんな俺に、眼鏡を掛けた壮年(両親よりも若干年上だろうか)の男性が一人、歩み寄って話を掛けてきた。 「君が、ケイト君だね?」 いつぞや母がその由来は魔王を倒した勇者にあるといっていた名前。その名前を呼ばれ、はいと答え話を聞く。どうやらこの男性は、俺の両親と一緒に魔王を倒しに行っていたらしい。俺の名前の由来であった勇者についても知っていて、その人についても詳しく教えてもらった。俺が父や母から聞いた事のある話もあり、一通り終わった後、彼はこう切り出した。 「君は、両親の仇を取りたくはないかな?」 ――何を言っているのだろうかこの人は。勿論、取りたくない訳はない。だけど、人道的にそんなことを訊くのはどうなのだろう。それに、如何しても、胡散臭さが拭えない。ついさっき起きた出来事が白昼夢ではないか、今ここにいるのも夢ではないかと思っているほどに信じられていないのだ。
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