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「違うのよ、熊! その方は私を助けてくれたのよ。」
「……はい?」
彼女が止めに入ると、意識を失う寸前で大男がピタッと揺らすのを止めた。
「だから、この方は私の恩人なの!」
両腕をブンブン揺らしながら彼女が必死に説明する。
大男は胸ぐらを離してくれた。
「し、失礼しやした。お嬢の恩人だとは見ず知らず…」
「気にしないでください。ところでアナタは?」
さっきとは違い申し訳ないようすでヘコヘコ謝る大男。
謝れるよりアナタが何者なのかメチャクチャ気になります…
「申し遅れやした。あっしは熊と申します! お嬢の護衛をやらしていただいてやす! 熊と呼んで下さい!」
「護衛って?」
律儀に話す熊さん。
何か見た目とのギャップがあり、不気味でもある。
しかし、お嬢の護衛って何だろう?
「お嬢はいつ誘拐されるかわからない身なので外に出かける時はいつもあっしが付き添うんです。
まぁ、さっきは不注意がたたり不良に絡まれたところをアナタに助けてもらいましたが…」
理由を話す熊さん。
それを聞くと彼女が有名人かのように聞こえるが、彼女…そんなに有名人なのか?
「そんなに危険なんですか?」
「そりゃあ、そうですよ!なんたってお嬢はこの一帯を仕切る大虎組の組長、大虎 大治郎の1人娘の葵様です!」
話す熊さんの目は輝いている。
だが、熊さんが言った重要なワードを聞いてその言葉が頭を駆け巡る。
大虎グミ? 大トラ組…
「大虎組!!?」
大虎組と解って思わず叫んでしまった。
通りすぎる人は一瞬こちらに視線を向けるが、また視線を戻し何事もなかったように歩き出した。
とても恥ずかしかったです…
「はいそうです。ご存知ですか?」
「いや、知らないほうがおかしいですよ。」
すっかり落ち着きを取り戻した女の子がゆったりとした口調で聞いてきたので、少し焦りながら答える。
それもそのはず、大虎組はこの街すべてを取り仕切る極道の一家で、人道に背く事はしない昔気質の組である。
街郊外に建っている屋敷はものすごく広い。
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