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「…………」
と、劫火くんがこっちを睨んでいた。
「な、なんですか? 劫火くん」
「失礼なことを言われた気がすんな……」
言いながらオニギリにかぶりつく。
(なかなか鋭い……)
劫火くんは自分の見た目がコンプレックスなのか『女みたい』とか、『かわいい』とか言われると烈火の如く激怒する。
入学式後に、他クラスの誰かが劫火くんを口説いてボヤ騒ぎになっていたから、気を付けてはいたのだけれど……。
「そ、そういえば能制の話だったよね」
ぼくは、なかば無理矢理に話題を戻した。
「くぅちゃんは編入組だから知らないのも無理ないけど、うちの能制の授業ってかなり面白いのよ」
「そうなの?」
中学の時の能制って、特殊能力の理論を延々学ぶだけのつまんない授業だったけど。
「うん。理論ももちろん学ぶんだけど、それ以上に実技授業が多いのよ」
「へぇー。実技」
実技と言われても、いまいちピンとこないけど……。
「ねぇねぇ。授業で何やったっけ?」
稲美さんが二人に聞く。
「あー。かくれんぼとか鬼ごっこ、あとバトルロワイヤルみたいなこともやったな」
「個別のメニューを時間内にこなす、っていう授業もありましたわね」 それに二人が続けた。
「結構楽しそうだね。楽しみになってきた」
ごちそうさま、と言ってぼくは弁当箱を片付ける。
「よっしゃ! くぅちゃんも食い終わったし、早く《大富豪》やろう!」
ぼくが食べ終わるのを見計らっていたのか、稲美さんがトランプを机の上に置いた。
ぼくが弁当箱を片付けるよりも早くカードを配っている。
もう定番になりつつある昼食後の大富豪の参加者は……五人。
最後の参加者は──
「あ! 来ましたわ!」
百合子さんが勢いよく立ち上がって、ロッカー側の入り口に駆けて行く。
入り口で百合子さんに抱きつかれている女の子は、黒鬼果実(くろおにみのり)。
見た目が幼いので、ついつい『ちゃん』付けにしてしまうのだ。
百合子さんに(なかば無理矢理に)連れられて大富豪会場に座る果実ちゃん。
……この子は見計らったように大富豪の始まる時間に教室に戻ってくるから、嫌では無いのだろう。
「さあ、ハートの3は誰が持ってるの?」
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