第一章

4/4

3人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
   さて。ここで、天照(あまてらす)高校一年B組の大富豪のルールを説明しよう。  一番最初に出すカードは『ハートの3』。ハートの3が手札にあった人が出し、そこから時計回りにカードを出していく。  革命(四枚同じ数字のカードを出すと、ジョーカー以外のカードの強さが反転する)あり。  8切り(8を出すと無条件で8を出した人から再スタート)あり。  都落ち(大富豪になったプレイヤーが平民以下になると、無条件で大貧民に)無し。  と、まあこんなルールで大富豪をプレイしていたわけなのだが……。 「うがぁー! また負けた!」  一番負ける確率が高いのが、劫火くんだった。  ま、ものすごく顔に出るしね。  で、一番勝率高いのが、 「…………」  果実ちゃんです。  劫火くんとは正反対で、一切顔に出ない。  ものすごいポーカーフェイス。  キーンコーンカーンコーン♪ 「あ、予鈴……」 「次の授業グラウンドだから、早めに終わりましょうか」  手早くトランプを片付けて、ジャージに着替えるために更衣室へ行く── 「じゃ、また後でねー」  そう言って消えていった稲美さんたちを名残惜しくも見送って、ぼくたちも更衣室へ……。  更衣室は体育館の入り口の左右にある。入り口に向かって左が女子、右が男子だ。  今は劫火くんと並んでジャージに着替えている。 「……なぁ。後ろから視線を感じるんだが」 「そう? ぼくは感じないけど」  でも、後ろがざわざわしているのは確かだ。 (なぁ、空。後ろで何やってるか見てくれ) (? いいけど……)  静かに後ろを振り返ると、デジカメ(しかも最新型)を持っている男子と目があった。 「…………」 「…………」  ここで少し計算してみよう。  『劫火くん(見た目は女の子)』+『デジカメ(最新型)』=『犯罪の香り』  クラスメイトが犯罪者になっている。 「お前ら……」  劫火くんは髪を燃え上がらせて怒っている。 「や、やべぇ!?」 「総員退散!」 「逃げろー!」 「消し炭にしてやろうか、おらぁ!」  男子は一目散に更衣室を出ていった。  劫火くんは、怒りが収まらないのか、能力を解除しない。 「……時間も無いし、グラウンド行こ?」 「なぁ。授業中にクラスメイトが炭になっても、それは事故だよな?」 「いや、事件だよ」  大事件だ。  こんな馬鹿トークをしながら、グラウンドに向かった。  
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加