二人の恋は

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私は会社に努め初めて約3年。恋人もいなかった。会社員には男性も女性もいたが男性が多かった。今迄何人の人に交際を申し込まれたが、いまいち『ピン』と来る物がなかった為、全部断って来た。断る度に辛い思いをした。逆の立場になると辛いからだ。 その日もいつも通り仕事を終え自宅へ向かっていた。 「則子~」 と、背後から私を呼ぶ声がした。振り向くと会社の同期生のよしみだった。 「びっくりするじゃない」 「ごめんなさい。今日時間ある?」 「今日?うん、私一人暮らしだからいつでも時間はあるわよ」 「よかったぁ~」 「どうして?」 「私達の会社に米田正人って人いるでしょう?」 「うん、米田さんがどうしたの?」 「米田さんが則子を待ってるのよ!」 「どうして?」 則子は半信半疑だった。 “米田さんが私に何の用だろう…” よしみは続けた。 「米田さんね、則子の事、前からいいように思っていたみたいだよ」 「それで?」 「今近くの喫茶店に米田さんがいるんだけど行ってみない?」 「別にいいけど…」 と、言われるがままよしみについて行った。 喫茶店に着き窓際に米田正人がいた。よしみが 「米田さん、お待たせ!則子を連れて来たわよ」 私は少し緊張していた。よしみに勧められるがまま米田正人の隣に座った。正人は 「こんにちは」 と言い、私も思わず 「こんにちは」 と答えていた。 「私ちょっとお手洗い」 とよしみは言い残し行ってしまった。 「………」 「………」 私と正人は黙ったままだった。私は思い気って 「何か用ですか?」 と、聞いてみた。 「用っていう程でもないが…」 正人は次の言葉を探していた。 「よしみさんとは友達長いんですか?」 「私が入社してからだから約3年じゃないかしら」 「そうですか…」 「はい…」 注文のウェィトレスが来た。正人は 「坂入さんは何なさいます?」 「私は別に…」 「まぁそうおっしゃらずに」 「じゃ、コーヒーを…」 「僕もコーヒーをお願いします」 ウェィトレスは立ち去った。正人は 「ここのコーヒーは美味しいんですよね」 「そうですか」 と、則子はあっけない返事。 「僕…」 正人が言い始めた時によしみが化粧室から帰って来た。 「おまたせ!化粧してたら遅くなっちゃったわ」 則子はその言葉が嘘だと分かっていたが黙っていた。則子は密かに “いかにこの喫茶店から出れるか” 考えていた。その直後注文したコーヒーが2つ目の前に置かれた。
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