謳を唱う様に歌う

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────── 剥離 なにか見た そうなにか その世界に人はいない 私も含めダレ一人 彼等は好き勝手に喚き散らしていた 他を思っているようで 己を思っていた 己を思っているようで その実なんにも思っちゃいなかった 石塔 格子戸 深爪 向こう岸 降る日 確裁 革命 撹乱 捕獲 隻眼 空席 腰までの沼 足の痺れ 思考 聞こえる とても 雑な音 すべてを隠せる 雑な音 音は覆う 声を消し 覆う 覆い救う 気付くと薄れる邪魔な影 揺らぎ溶けてく 霧の中 懐中時計 断層 毛皮 件 忌事 漆喰 湿地 失明 過失 鑢 南京錠 引っ掻き示す 壁の痕 懊悩 呼ぶ 呼ぶ 声を 音が 音が かき消す 私の 私の それをも 渇望も 失墜も 雑な 雑な 音が 音が 音が その振動が 削り盗る そんななにかを見た そう見たはずだ
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