始まり

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一週間後に彼女から連絡があってね。全く知らない場所からさ。 「私…病気になってしまったの。治すのに必要な薬が私達のお金を足しても全然足りないの。原因はあの国のウイルスだそうよ…。どうすればいいの?」 「…心配すんな。なんとかなる。いや、なんとかしよう。」 「ムリよ。一〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇もかかるのよ。こんだけの大金手に入れられないわ!…あるとしたら石油でも掘るしかないわ…」 彼は考えた。彼女のために何ができるか?億単位の金は彼の友人も家族も出せない。出せたとしても全然足りない。本当に石油を掘り当てるしかない。これは「運命」の仕掛けた罠かもしれんな。 彼は答えを出した。 苦しく辛い答えを出した。夜の病院の…彼女のベッドの脇に手紙を添えて…砂へと… どうだ、分かっただろう。彼が何をしてるかが。こいつは五年来る日も来るひも掘り続けている。驚いたことに飯も食わず、水も飲まずだ。第六感のいい奴なら彼の5、6メーター後方に角と羽のある黒の少年が見えるはずだ。いやいや、彼はこいつに気づいてないんだ。それどころか周りが見えてねぇ。時も空腹も、朝も夜も分からない。どれだけ掘ってるかも知らねえ。悲しいねぇ。 彼はねたま~に休んで横になる。だがな寝ないんだよ。横になったまま大きな声で叫ぶんだ。本当に大きな声でねぇ。悲しそうなんだ… 「おい運命!アンタは人の命を転がしてずいぶん楽しいだろうな。さぁ笑えよ!どうせ見てるんだろ。オレがジタバタもがいてんのを。過去に戻してくれよ…。アイツと結ばれるはずだったのによ…。」 さぁ良い子は夢に会う時間だ。今日はこれで終わりだよ。さぁ帰んな帰んな。また明日続きを聞きに来い。
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