三年後…

3/3
前へ
/11ページ
次へ
しかし彼女はこんな仕事をしてんのに彼を忘れてはいないんだよ。それどころか今でも愛してんだ。名前も知らない男の胸や腕に体を預けても心は彼を待ち続けているんだ。どんな辛い目にあっても苦しい目にあっても心は彼を… ああそうだった。言おうと思ったんだけどね。彼の手紙の内容って何だったと思う?その中身は嘘だらけさ。いたたたた、そんなつねんな。中身を教えてやるからさ。いいかい手紙にはこう書かれていたんだ。 『あの旅行から僕らには不幸なことが続いてますね。僕は「運命」について調べました。あいつはある国をたった一人…いや、一匹で滅ぼした悪魔だったのでした。きっと次なるターゲットは僕なのです。あなたは僕のために病気になったのでしょう。 しかし、大丈夫です。僕ら二人は決して離れたりはしません。明日が来るのを信じて待っていて下さい。僕はあなたを助け出すために…。これが僕の夢になりました。』 これを見て何と思った?彼女はな、この文を見て涙した。そして思わず、 「この手紙のどこに信じられる要素があるっていうの?私達の明日っていつになったら来るのよ?」 と、考えてしまった。心の中ではこの手紙が勇気になった。毎朝毎朝、彼女にとってのおまじないのように呟いてる。彼女は紛れもなく明日を信じてる。 しかし、彼の夢を掘り出す作業を終えずに八年もかかっている。 「ねぇ運命。あなたでも私のこの気持ちは動かせないでしょう。何日も何年も朝になったらこの言葉が私の中に… 。この嘘が響いてるのよ。」 これが夢を掘る男とそれをひたすらに待つ女の嘘。彼等は定めよりも互いを信じ合っていた。愛の証だ。 さぁて今日はここまで。また明日来いよな。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加