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「おーい、金森!」
ちょうど廊下に出てきた女子生徒を呼び止めると、一気に表情が変わった。
固まったかのように、強張るのだ。
「今から部活か?」
気がつかないふりをして話しかけると、少し後ずさる。もしかしたら金森は自分でも意識してないのかもしれない。
しかし、右足は2cmほどうしろに下がったし、言葉を返す金森の笑みはひきつっているのだ。
これが無意識ならば自分はどれだけ嫌われているのだろう!
「あ、はい。えと、」
また生徒会のことですか……? とたずねる金森は戸ノ上から見たら愛らしかった。
かわいい……! だなんて嫌われているくせにめげない奴、と自分でも泣きたくなる。
転校ばかりしていた小学校の頃に1年だけ一緒にいたあの金森は、たぶん自分の初恋だった。最後の数ヵ月は避けられていたような記憶があってなんだかショックだ。いまだにどうしてだかわからない。
「って、わからんことだらけかよ」
「はい?」
「あ、いや」
あの頃はなにも伝えることはできなかったが、高校で再び会えるだなんて運命だ! と燃えている戸ノ上は意外と乙女チックだったりするのかもしれない。
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