プロローグ

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私は恥ずかしいのか ぎこちない感じに なってしまった。 『そんな固まらなくていいし 警戒せんでもいいから』 『そうだょね、何歌おうかな~』 『う-ん…サザンは? 俺はサザエさんでも歌うかな』 『キャハハ。何それ-~ 古いんですけど~』 翔太のお陰でいつの間にか 重い空気は無くなり、 2人の距離が一気に 縮んだ感じがした。 そんな時… 『プルルルル』と 1つの着信が鳴り響いた。 翔太は携帯の画面を見ると 気まずそうに 出ようとしなかった。 『鳴ってるょ?出たら?』 『うん…』 そう言うと翔太は私に背中を 向けて出た。 聞きたい気持ちはあったが、 相手の事を思うと、止め あえて聞かない事にした。 『ごめんね?』 『ううん、いいょ』 『……元彼女から』 『………』 私は何も 答える事が出来なかった。 『あっちから浮気 してきたのに、今さら もう1回やり直そうと 言われてもなぁ………… 確かに彼女の事は大好き だったけど一度離された手を 繋ぐって難しいな。』 翔太は どこかと淋しそうな目を マイクに注いだ。 『あっ、ゴメンな、 俺の話しばっか聞かせて。 歌おうか。』 翔太は我に戻ったのか、 マイクを握った。 『…………』 『稲村?』 私は自分でも 何故か良く分からないが 涙が溢れてきた。 声を堪えようとしたが 嗚咽となり出てしまった。 『ごめ…なさい。 あたし、関係無いのに。』 『分かってる… 分かってる… 稲村の言いたい事は 分かったから…… もう何も言わないでくれ』 そう言うと強く、そして 優しい手で 私を抱き締めてくれた。 …微かだけど震えていたのは 私の思い込みだろうか。 『あったかい… 人の温もりって… どこか安心するょね…』 『……稲村はどこかと たま-にだけど淋しい目を するょな…』 『……………っ。』 私は何も言い返せ無かった。 翔太には何でもお見通しみたいだ。 しばらくして私は重い口を 開いた。
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