序章

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「明日、満月の夜にこの屋敷に訪問者が来るみたいね」 目を瞑ったまま他人事のように話すレミリアに、パチュリーは首を傾げる。 (……訪問者?) 元々辺鄙な所に住んでいることもあり、レミリアの知人は数える程しか居なかったはずである。 「レミィにそんな知人がいたなんて初耳だけど」 <あの計画>が進行中の現在、訪問者などは有り得ないと考えるパチュリーはレミリアに遠回しにどういうことなのかと訊ねる。 「懐中時計とナイフ、この二つがキーワードね」 だがレミリアは意味深なことを言い出すと一人納得したようにうんうんと何度か頷いた。 「……結局誰なの?」 いつものことではあるが予想から斜め上をいく返答にパチュリーは戸惑う。 レミリアは瞼を開くと何処か遠くを見つめる。 「見たことも会ったこともないわよ、でも久々に明日は楽しい夜になりそうね」 その紅い瞳の見つめる遥か先では銀の懐中時計が時を刻んでいた。
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