氷の薔薇

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春といえどもまだ肌寒く、桜も咲ききっていない通学路を俺は歩いていた。 今年から3年になるわけだが、とくに変わることはないだろう。 あるとすれば大学受験だろうが、それについては触れないでおこう。 勉強なんて考えるだけでも頭が痛くなる。 いや、本当に痛いのは切れた唇だがな。 「よう、海斗」 俺が唇の痛みに顔をしかめていると、肩を叩かれる。 俺の知っているかぎり、朝からここまでテンションの高い人間は2人しかいない。 んでもって男となると1人だけだ。 「黙れ雅樹」 「おまっ、友達に向かって黙れはないだろ」 「友達?まっまさか、お前は世界征服を……」 「違うわ!あんな目玉野郎と一緒にすんな!」 朝からテンションの高いこいつの名は坂本 雅樹。 短めの茶髪……いくら短めでも茶髪と非行きまわりない男で、170ちょいの身長をしている。 まぁ悔しいが親友の部類にはいるだろう。 「にしても海斗。お前また喧嘩したのか?」 雅樹は俺の切れた唇を見ながらそう言う。 「まぁな。だがあれは仕方ない。俺は普通に歩いていただけなんだ。なのに急に4人の血の気の多いあんちゃん達が絡んできたんだ。正当防衛なんだ」 「理由はどうあれ喧嘩は喧嘩だろ」 「おお神よ。我を戦いの輪廻から救いたまへ」 「お前神とか信じないんじゃなかったっけ?」 「ばぁろう。お前とは違って長め黒髪のいい子な俺が喧嘩三昧の毎日を送ってるのは悪魔にとりつかれてるからだ。だったら神に頼むしかない!!」 「いやいや、どう考えても一昨年のが原因だろ」 雅樹め。 思い出したくもない記憶を掘り返しやがって。 ああ、過去の記憶が鮮明に浮かび上がってくるぜ。
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