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――数日後。
「汐にはどれが似合うか・・・」
「これなんかどうでしょう!」
「ダメだ、派手すぎる」
場所はデパートの水着売り場。俺たちは然るべくして水着を選んでいた。
「汐はどれがいい?」
「んー」
水着の種類は様々だ。色もとりどりで、迷うのも仕方がない。
「これなんかど」
「お前はまず自分のを選べ!」
風子は先ほどから、自分の水着はそっちのけで、汐の水着しか選んでいない。自分好みの水着を着させて、トリップするつもりなのだろうか。しかし、そうはさせない。
「んー・・・これ!」
「・・・なんというか、オッサンはいったいどんな教育をしたんだ・・・。とりあえず試着してみるか?」
この水着、女の子が選ぶにはえらく渋い趣向だ。一言で表せば、極道の女達が着てそうな着物のイメージ。勿論渋さ具合がである。さらしと相性がよさそう。・・・なんでこんなのが子ども用の水着にあるのだろうか。
「かっこいい!」
しかし汐の決意は固く、どうやらこの水着で決まりのようだ。
「これなん」
「いいから自分のを選べ!!」
「・・・よく見て下さい、風子の水着ですよ!どうでしょうか?」
「ぁ、ああ・・・悪い。ど、どうって・・・」
水着姿の風子の背後に、「ちまー」という言葉が見えた気がした。
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