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海水浴当日。俺たちはビーチに立っていた。
晴れ渡った空からは、容赦なく太陽光が降り注いでいる。汐の肌が気がかりだが、海を楽しめる天気には違いない。日焼け止めを塗れば大丈夫だろう。
「汐ちゃん、海ですよ!海!!」
「うん!うみひろい!」
海・・・か。
思えば俺はいつ以来の海だろう。
この前は汐のことしか頭になくて、自分のことを考えるヒマなんて無かったな。
思い出せないほど昔、それこそ汐くらいの時に。親父に一度だけ、連れて行ってもらった、はずだ。
あの時も親父は忙しかったはずなのに、俺を喜ばせようと。
微かに覚えている。一度だけ行ったこと、そして楽しかったことだけを、本当に微かだが、覚えている。
俺は、汐に楽しい思い出を与えてやることができるだろうか?
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