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「ありましたね」
「そうだな」
二人は新刊を目の前に目を輝かせていた。
普段無表情な紗枝だがこの時ばかりは嬉しそうな表情がにじみ出ていてかなりレアな光景だ。
「そんなに楽しみだったんだ」
「はい……フォンフォンですから」
「そっか」
「何か言いたそうですね?」
紗枝が睨むように大樹の方を見た。
「あっ、いや……なんと言うか……紗枝っていつも無表情だから、たまに何にもかもつまんないんじゃないかと思ってさ、だからフォンフォン見て目を輝かせてる紗枝を見たら安心した。紗枝も笑顔になれるんだなって」
「失礼ですね……わ、私だって嬉しい時は笑います……しかし、もしかしたら私からも笑顔が消えるかもしれませんよ?」
紗枝は試すかの様に大樹を見つめた。
「大丈夫!そんなことさせない……俺の風が楽しいこといっぱい運んできてやるよ」
大樹はニッコリと恥ずかしそうなそぶりも見せないで堂々と言った。
「……カ、カッコつけたつもりですか?残念ながらカッコよくありません……だ、だいたいカザミンが運んでくるのはいつも厄介事です……///(……ありがとうカザミン、私の笑顔の理由はおそらく……あなたでもあるのですよ)」
紗枝は大樹の顔を見ることなく一瞬顔を赤らめた。
「そして、そんな厄介事を運んでくるカザミンに言っときます…………森川さんには気をつけなさい」
紗枝の真剣な眼差しが大樹を貫いた。
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