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僕は慌ててその人に駆け寄った。
右手で手綱を持ったまま倒れている。
何かに襲われた、という考えは思い浮かばなかった。
人を襲う動物も、盗賊も、ここにはいないのだから。
落馬?
いや、それならここに馬はいないだろう…
それならなぜ…
僕はうつ伏せで倒れた人を、ごろりと寝返りをうたせるように仰向けにした。
驚いた。
その人は女性だった。
可愛らしさは残るが、綺麗に整った顔立ち。
しかし閉じられている目は大きく、少し幼い印象を与えている。
10代の半ば…くらいだろうか。
その女性は息をちゃんとしていた…
そして少しだけ目を開き、しんどそうに
「………お腹…すいた…」
そう呟いた。
………行き倒れ…?
その言葉が頭をよぎった
それが、彼女との出逢いだった。
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