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少女は勢いよくアップルパイの皿を掴んで自分の元へ寄せた。
驚く程の食べっぷりだ。
少女がアップルパイを飲み込む度、肩にかかるくらいの柔らかなブロンドヘアが揺れる。
僕は少しだけしてから彼女を見つめてしまっている事に気づいて、2つのカップに紅茶を注いだ。
少女の方を見ると、既に8等分の内の3きれを食べている最中だった。
…僕も食べたい。
そう思って少女の元のアップルパイのひときれを掴んだ。
…じろり
見られた。
まるで餌をとられた動物のようだ。
しかし彼女は何か言うでもなく、食事へ集中していった。
本来、これは僕の物なのだ、と理解できる理性はあるようだ。
安心した。
僕はアップルパイを少し眺めてから、尖った先を口へ運んだ。
芳ばしい香りとサクリとした食感の間から現れる蜜の濃いリンゴの味…
うん、上出来だ。
とても美味しい。
僕が味わってひときれのアップルパイを食べ終わるのと、
少女がアップルパイを食べ終わり、カップの紅茶もグイっと一気に飲みほすのとは同時だった。
「ごちそうさまでしたっ!!」
こちらも微笑んでしまいそうな少女の笑顔。
「…お粗末さま」
僕は小さく答えて、紅茶の注がれたカップに口をつけた。
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