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「いやぁー、助かったよー。食べ物きれちゃってさぁ…。」
彼女は笑顔で行き倒れた経緯を話しだした。
僕はたまに相づちを打って、久しぶりの人の話を楽しむ。
彼女はこの森から馬でも半日かかる村からやってきたらしい。
そして森で道に迷った。
十数日に及ぶ遭難。
連日の雨により気温は下がり、動けない日が続く。
当初、十分と思われてた食料も底を尽く時が来る。
なんと最後のパンは馬に食わせたらしい。
そして空腹に耐えきれず行き倒れ。
「君が私を見つけてくれて本当によかった…」
彼女はまた、僕に向けて微笑んだ。
「そうだ、まだ名前を言ってなかったね…
私はラキ。別に呼び捨てで構わないからね。
君は?」
「僕は…ハッドだよ。」
上手く笑顔を作れただろうか。
やっと話せた。
今まで相づちしか打ってなかったから少しだけ声がおかしかったかもしれない。
「へぇ…変わった名前ね」
名前をどうだとか言われたのは初めてだ。
そもそも、この森で行き倒れを見つけたのも初めてだった。
この森は大陸の端だと教わったし、地図でも端だ。
なら、彼女…ラキはなんのためにこの森に来たのだろうか?
僕は思いきって訊くことにした。
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