勇者さん登場

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「その戦争で、魔族を治める王、魔王は死んだとされているの。」   魔王…。 魔族を治める王。 彼が死んでも戦争は終わらなかった。 人間によって魔族の殲滅は行われた。   「それで戦争は終わって、魔族は滅んで、今の平和な世界が築かれたと言われているの。」   魔族がいれば平和ではない。 彼女はそう教わったのだろうか。 その戦争で死んだ魔王は平和を望んでいたのに。   「でもね、考古学の進歩によって最近分かったんだけど……。 魔王には子供がいたの。」   僕は驚きを隠せなかった。 手にしていたティーカップを落としかけた。   「ふふ…。驚くでしょ? そして、その魔王の子供の死はどこにも書いて無いらしいの。」   嫌な予感は随分前から感じていた。   「しかも、滅んだとされていた魔族も、生き残りがいるかもしれないって。 そして魔王の子供が新しい魔王になって、人間に復讐とかを考えたりしちゃってるんじゃないかって。」   僕はなるべく平静を装おうとして、紅茶をカップ注いだ。 手が…震えている。
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