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よく晴れた日。
太陽が空のてっぺんにのぼる少し前。
私は気が気でなかった。
私は魔王だ。
魔王たるもの、いつも冷静であらねばならない。
だからこんなにそわそわしていたら他の魔族に示しがつかな……
…………ッ!!!
魔王城で産声が響いた。
そして間をおいて、
騒がしい足音が近づき、
魔王の部屋の扉が勢いよく開かれた。
「クロノ様!!お子様がお産まれになられました!!!」
そこにいるのは歓喜の表情をあらわにする側近だ。
無駄に広い城を走って来たのだろう、
肩で息をし、髪の無い頭には汗がにじんでいる。
城を小さくするべきかもしれない。
だがそんなことよりも今は
「何!?本当か!!!」
早く我が子の顔が見たい。
「本当ですとも!!」
嬉しかった。
純粋に嬉しかった。
「すぐに参ろう!!」
一秒でも早く、我が子の顔が見たい。
机の上の書類を放り出した。
内容はどれも人間との調和の為の無駄に難しい文が並べられている。
そんなものは後でいい。
一瞬でも早く、愛する妻と愛しき我が子の元へ行きたい。
側近が催促する。
すぐに来て欲しいのだろう。
待っていろ、愛する妻と愛しき息子よ。
力強く自らの部屋の扉を閉め、城の反対側に位置する部屋に急いだ。
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